今回は「疲れ」がとれないのは糖質が原因だった
著者 溝口徹氏の本の要約です。要約をさっと動画で見たい方はこちら、約8分です。
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「「疲れ」がとれないのは糖質が原因だった」 著者 溝口徹氏
忙しい現代人の大きな悩みの一つは、「いくら寝ても疲れがとれない…」。そのキーワードは糖質のコントロールにあります。本書では、食事(栄養)のとり方と疲れ、病気、老化との関連について、医者の立場の筆者から詳しくご説明します。
本書の要点
1.慢性的な疲労感は、誤った回復方法による「エネルギー不足」が原因
2.疲れは、栄養不足と過剰な栄養摂取とのバランスが崩れることから始まる
3.疲れない脳と体をつくるカギは「副腎」にある
4.疲れたときこそ正しい栄養を摂取しよう
5.最新栄養医学が教える「副腎を強化する栄養素」のまとめ
慢性的な疲労感は、誤った回復方法による「エネルギー不足」が原因
よく「疲れたときには甘いものを食べて元気を出す」と言いますよね。実はこれ、大きな間違いなんです。「疲れ」という症状は、体が発する「休め」サインなのですが、正しい休息方法を知らない方が多いのではないでしょうか。ここで注意していただきたいのが、「疲労」と「疲労感」は別物だということ。医学的、科学的な「疲労」というのは、感情ではなく、体の不調レベルで疲労が出ているということです。1980年代より「慢性疲労症候群」という病名も世界的に認められるほど、「疲労」というのは根本的な原因解明も難しい疾患の一つなのです。
そこで近年、疲れの原因として注目されているのが「副腎」です。私たちがストレスを受けると、副腎はコルチゾールと呼ばれるホルモンを出し、血圧や血糖、免疫機能を正常に保とうとします。しかし、ストレスが長期的になると、副腎が疲れてしまって、慢性疲労の原因となりうるのです。
このように、「疲れ」は疲労感ではなく、体の臓器(特に副腎)のエネルギー不足によって引き起こされます。そのエネルギー源となるのは、食べ物のなかに含まれる栄養素です。糖質、脂質、たんぱく質は「三大栄養素」、そこにビタミンとミネラルを合わせて「五大栄養素」と呼ばれます。現代人は特に、総カロリーではなく、栄養素のバランスを意識することが重要なので、そのメカニズムについて事項で述べます。
疲れは、栄養不足と過剰な栄養摂取とのバランスが崩れることから始まる
私たちの身体は、エネルギー(正確にはATP; アデノシン三リン酸)が必要です。細胞の中にあるミトコンドリアという器官が、このエネルギーを産生しており、これをTCAサイクル(クエン酸回路ともいう)といいます。このしくみでは、三大栄養素である脂質・糖質・たんぱく質からエネルギーがつくられるのです。詳細は省略しますが、人間の体は、本来は代謝しやすい脂質をエネルギーとして使い、非常時にたんぱく質を使うというシステムになっています。一方、現代人の食生活はかなり糖質に依存している傾向にあります。すると、血糖値が乱れて、低血糖になると強い疲労感を覚えたり、太りやすくなったりと体に不調が生じます。「糖化」という現象は、体内にあるたんぱく質すべてに作用するため、酵素はもちろん、ホルモンにも影響が出ますし、そうなると当然、正常な機能が失われてしまいます。
そして、人間本来の体のしくみを考えると、脳に必要なエネルギーは糖質以外からでもまかなえることをご存知でしょうか?脳はブドウ糖という糖のほかに、ケトン体とう脂肪由来のエネルギー源も使うことができます。なので、疲労感などを補うために必要以上に糖質を摂ることはないのです。さらに重要なのは、ビタミンとミネラルの摂取です。この二つは、脂質、糖質、タンパク質が体内に吸収されるときや、エネルギーに変換されるときに必要な栄養素になります。ニンニク注射の中身にはビタミンB群や、慢性疲労症候群の治療にはビタミンCは、重要な栄養素を補う事例ですね。また、女性に多いのが鉄不足ですので、あなた自身の疲労タイプをチェックして(本書p. 98、99を参照)、足りない栄養素を積極的に摂取することが大切です。
疲れない脳と体をつくるカギは「副腎」にある
これまで、糖質の摂りすぎが、かえって疲れを招くと述べました。その原因の一つが、これからご説明する「副腎疲労症候群」です。症状の例としては、「朝が弱い、起きられない」「夜になっても目が冴えて眠れない」「何かをする意欲がわかない。やる気がでない」などがあります。また、副腎疲労症候群は、うつや睡眠障害症状とも重なっているため、発見が遅れることもあります。なりやすいのは、甘いものやパンなど糖質をよくとったり、長時間労働など不規則な生活習慣の人が多いです。
このように、副腎は小さな臓器ですが、心と体の状態をコントロールするうえで非常に重要な役割を担っています。そのメカニズムには、副腎皮質と副腎髄質と呼ばれる部分から分泌される種々のホルモンが関与しています。中でも、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンの過剰な分泌は、現代のストレス社会においても課題となっています。
では、ホルモンの働きを正常にコントロールするためには、どうしたらいいでしょうか。実は、血糖の変動によって分泌されるインスリンとのバランスが重要なのです。副腎は、明け方活発になりにくく、夜にかけて静まりますが、これは自律神経の働きと一致します。血糖値も、自律神経の働きによってコントロールされているので、そのバランスが崩れると、インスリンの分泌はもちろん、副腎疲労症候群が姿を現しやすいのです。副腎が疲れてくると体はエネルギーをつくり出すことができず、それが慢性的な疲労や倦怠感につながってしまいます。繰り返しになりますが、甘いものは一時的な助け舟であり、むしろその後のダメージの方が大きいことを覚えておいてください。
疲れたときこそ糖質制限と正しい栄養摂取を心掛けよう
疲れによる悩みはいろいろあると思いますが、そんなときこそ「栄養」を摂ってもらいたいものです。疲れない脳と体をつくる食べ方の基本は、「低糖質・高たんぱく質」です。たんぱく質は、私たちの皮膚や骨、血管、内臓、筋肉からホルモン、酵素、脳の神経伝達物質まで、あらゆる基本材料となります。特に重要なのは、植物性(豆腐や納豆に含まれる)と動物性(肉や魚、卵に含まれる)のたんぱく質をバランスよく摂ることです。
次に、「低糖質食」を実践するためには、次のようなコツを心得ておくとよいでしょう。それは、①早食いをしない、②食事の回数を増やす、③間食に甘いものはダメ、④食物繊維→たんぱく質→糖質の順に食べる、⑤カロリーよりも糖質を意識する、⑥飲み物の基本は水、などです。「高たんぱく食」を実践するためには、①こまめに食べる、②食べないダイエットはしない、③ごはんではなく、おかずを主食にする、④調理方法を工夫する(加熱処理しすぎないなど)、⑤プロテインを選ぶときは、中身をチェック(糖質過剰にならないように)、などです。
ただ、疲れがとれないヒトの慢性的なエネルギー不足を補うには、もっとも効率の良い「脂質」がおすすめです。糖質は、ケトン体が代わりとなったり、たんぱく質からも産生されたりしますが、脂質は別だからです。「油=健康に悪いもの」という概念は不要です。糖質・たんぱく質・脂質をバランスよく摂り、特に糖質過多にならないよう気をつけましょう。たまには、一日1回、、普段ない刺激を与えることで腎臓をリセットするのもおすすめですよ。アロマオイルや足浴、ストレッチなどが効果的です。時間はかかりますが、毎日きちんとした食事習慣をつけて、副腎の機能を回復させることが重要です。
最新栄養医学が教える「副腎を強化する栄養素」のまとめ
これまで述べてきたように、糖質の過剰摂取をやめ、血糖の調整に使われる副腎ホルモンを節約するだけでも、ずいぶんと副腎の機能は回復します。特に、副腎を強化する栄養として第一に上がるのが、ビタミンCです。
また、ビタミンC同様、副腎ホルモンの材料となるパントテン酸は、ビタミンB群の一つです。ほかには、ヘム鉄、亜鉛、ナトリウム、グルタミン、ビタミンEもバランスよく摂るといいですね!
まとめ
今回は、疲れの原因として、特に副腎の機能をコントロールする重要性について、医学的な基礎メカニズムも踏まえてお伝えしてきました。本書には、各ホルモンの作用やエネルギー代謝についてなど、まだまだ専門情報がたくさんあります。総カロリーではなく、糖質の量と栄養バランスに配慮して、疲れを取り去る生活習慣を身につけましょう!
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