今回は、「ストレスとGABA」
著者 横越 英彦(よこごし ひでひこ)氏の本の要約です。さっと動画で見たい方はこちら、約7分半です。
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「ストレスとGABA」 著者 横越英彦氏
ストレス社会や高齢化社会の中でQOLを高めるためには、日常の食生活を注意して、ストレスをためないようにすることが重要ですよね。特に、興奮を鎮める抑制性神経伝達物質として知られるGABA(γ-アミノ酸、ギャバ)が近年注目されています。GABAは、動物実験やヒト臨床試験においてストレス軽減効果が立証されてきました。一方、都市部でのペットのストレスに関しても問題視されており、これが飼い主のストレスにもなりうることなども考えると、GABAの研究は社会に貢献すると思われます。本書は、QOL向上につながるGABAの役割について、詳しくご説明します。
本書の要点
1.ストレスは、あらゆる疾患を引き起こすが栄養を意識した食事で軽減される
2.GABAの抗ストレス作用は、血中ホルモンや脳内物質をコントロールする
3.GABAのストレス軽減作用の実例、実験の紹介
4.GABAを含む食品と摂り方
5.GABAの将来性と今後の課題
ストレスは、あらゆる疾患を引き起こすが栄養を意識した食事で軽減される
ストレス対策は、健康を維持するために必須ですが、ストレスの原因、状態には個人差があります。また、ストレスには「良いストレス(軽い飲酒、適度な運動など)」と「悪いストレス(極度の不安、緊張、化学物質など)」があるため、良いストレスを取り入れて、悪い方の原因を排除することも大切です。
では、ストレスを感じるとカラダはどうなるのでしょうか。ストレス刺激は全身に影響して、うつや慢性疲労、摂食障害、不登校、嘔吐、肥満などあらゆる不調を起こします。神経機構にダメージが加わると統合失調症に、ストレス状態の慢性化によって胃腸潰瘍やアレルギー疾患に、循環器障害としては高血圧症、不整脈、心臓神経症などにもつながります。
そうならないために、まずは毎日の「食」を改善しましょう。例えば、タケノコに多く含まれるチロシンや、お茶特有のアミノ酸であるテアニンは、ストレスを軽減させる効果が研究レベルで明らかにされています。また、香水やアロマテラピーも有効です。
GABAの抗ストレス作用は、血中ホルモンや脳内物質をコントロールする
まず、GABAは肉類、魚類、野菜や果物、発酵食品まで幅広く含まれています。GABAは、体に取り込まれると、脳に直接吸収されるのではなく、肝臓や腎臓などで代謝されます。そして、血中コレステロールを低下させたり、成長ホルモンの分泌を促したりします。それゆえ、脂肪燃焼作用や高肥満効果が動物試験レベルで報告されています。
一方、GABAと脳との関わりとして、血圧上昇を抑える効果があることが分かっています。これは、脳全体の代謝活性を高め、腎臓の利尿作用を促すことによるのではないかと考えられています。また、精神安定作用もあることが分かっており、これは「セロトニン」という脳内物質の分泌を促し、ストレスを軽減させる効果も報告されています。
GABAのストレス軽減作用の実例、実験の紹介
日常的なストレス条件でもGABAの摂取は影響するのか、抜粋した例をご紹介します。
例えば、ヒトの吊り橋実験では、ストレス負荷時にGABAを摂取すると、吊り橋の中間時点で精神的な恐怖が薄らいでいることが報告されました。気分調査では、GABAは更年期障害のイライラや精神的な憂うつ状態を改善し、落ち着かせる効果があることが分かりました。また、満員電車実験では、乗車前にGABAを摂取しておくと、唾液中のストレスマーカーが2倍ほどに抑制され、抗ストレス作用があることが分かりました。
以上のように、GABAのストレス軽減効果は、動物実験レベルのみならず、ヒトの日常にも影響することが見て取れます。働き盛りのビジネスパーソンだけでなく、さまざまな世代のストレス軽減にGABAの機能性が期待できます。
GABAを含む食品と摂り方
最後に、GABAを含む食品を取り入れた食事について、簡単にご紹介します。
GABAは、トマト、ジャガイモ、ナス、カボチャ、キュウリ、キャベツ、カブ、シイタケ、大根などに比較的多く含まれています。果物だと、かんきつ類やブドウ、カキ、キウイなどです。また、発酵食品であるキムチ、納豆、ぬか漬けやヨーグルトなど、伝統的な食品や和食にも多いです。
次にGABAの摂り方ですが、GABAは体内に取り込まれた後、1時間をピークに代謝・分解されます。よって、その場のイライラや気分の低下などを改善したい場合には、毎回の食事だけでなく、GABAを配合したチョコレートやサプリメントを摂るといいでしょう。
有名な機能食品だと、アクエリアス シャープチャージ(日本コカ・コーラ株式会社)、メンタルバランスチョコレートGABA(江崎グリコ株式会社)、たのむぞGABA(ダイドードリンコ株式会社)、CUCU黒ミルク GABA配合(UHA味覚糖株式会社)、(ライオン株式会社)発芽米(株式会社ファンケル)、GABAしょうゆ(株式会社ソルケア)などがあります。
GABAの将来性と今後の課題
GABAの生理機能に関する基礎研究はやられてきましたが、一方でまだ多くの課題が残されていて、特にGABAの作用メカニズムについては、未だ不明な点が数多く存在します。例えば、GABAが抗ストレス作用を表すには、体内のどの部位に、どのようにして働いているかなどは、必ずしも十分な知見が得られていないのです。ただ、これまでの動物実験やヒトボランティア試験を通して、GABAは自律神経系のバランスをコントロールし、抗ストレス作用を発揮するように考察されます。よって、現代の高ストレス社会や高齢化社会においてQOLを高めるためには、GABAの活性を上がることが重要です。その一つとして、先ほど食品素材をご紹介しましたね。世界各国でも、ストレス軽減を目指した食品やサプリメントの開発が進んでおり、今後はアメリカ合衆国をはじめとして、世界に向けたGABA関連食品がさらに多様になることが期待されます。
まとめ
今回は、ストレスを制御している脳内伝達物質GABAについて詳しくお伝えしてきました。ただ、かなり医学的な専門知識も多く出ているため、要約では取り扱いきれていない内容もいくつかございます。ストレス社会でQOLを向上させるため、より正しい知識を吸収するためにも、ぜひ本書を読んでみてはいかがでしょうか?
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