玄米が健康に良い、というのは今では常識になりつつあります。でも実際には「玄米食を続けている」という方は少ないのではないでしょうか。「健康にいいのは分かっているのだけれど、玄米は硬くてあまり美味しくないから、ちょっと敬遠してしまう…」という方が多いと思います。そんな方にこそ、本書は非常にオススメです。本書では、香川県三野町の町長である安藤幹夫氏が、自分の実際の経験を基に発芽玄米食の大切さを説いています。この町は、発芽玄米によって住民の食生活の改善に成功した町として有名です。是非本書で三野町の取り組みについて学びながら発芽玄米の魅力を理解し、皆様の健康生活のお役に立つことができれば幸いです。
本書の要点は以下の3つです。
(1)行政の理不尽な政策
(2)三野町にやってきた発芽玄米
(3)なぜ発芽玄米が広まったのか
(1)行政の理不尽な政策
著者である安藤幹夫氏は、平成元年に香川県三野町という小さな町の町長に就任しました。しかしそこで、「行政」というものに強い危機感と不信感を感じたのです。その中でも「医療費増大」と「減反政策を中心とした農業問題」は、特に大きな問題でした。
医療費増大の原因の根幹は高齢者層の生活習慣病の増加でした。確かに、高齢者層の方が、病気になった際に最高の医療を受けられる環境は絶対に必要です。
しかしながら、それよりももっと大切なことは「そもそも病気にならないこと」なのです。そのために必要なのは「町民の食生活の改善」でした。安藤氏は、「町民の食生活を改善して、病気のない町にしよう」という信念のもと、「主食であるコメをしっかり食べよう」というところから活動を開始しました。これは三野町がコメどころであることも大きく由来しています。
ところがここで行政の信じられない壁にぶつかります。それが減反政策、つまり「コメの生産を制限する政策」でした。安藤氏自身、個人的には「美味しいコメをしっかり作って欲しい」と思う一方、行政の責任者としては「しっかりと減反の割り当てを守って欲しい」と農家を説得しなければいけない、さらに農家も米作りに対する情熱を失っている、そのような理不尽な状態にショックを受けました。
(2)三野町にやってきた発芽玄米
そんな中、思わぬ転機が訪れます。それが、安藤氏が「大見薬草研究所」という薬草研究の同好会に初めて招待された時のことでした。その研究会の会員の方々から薬草の素晴らしさについての話を聞いたのです。この研究会の薬草研究が、行き詰まっている町政の突破口になると考え、安藤氏は薬草での町おこしを開始しました。研究会のメンバーの研究結果の冊子の出版から始まり、薬草研究の中心となる「薬草の館」の建設を通じて、徐々に町民の間で薬草に対する関心が高まっていきました。
それとほぼ同時期に、ヨーロッパでも薬草・香草が盛んに愛用されているという情報がマスコミで大きく取り上げられるようになりました。いわゆる「ハーブ」のブームです。そこに時代の流れを見出した安藤氏は、ハーブ普及のための女性のリーダー育成を目的に研修生を募集しました。希望者のハーブ園での宿泊研修など、具体的な活動がスタートしたのです。その活動の中で平成7年には会員数45名を数える「レディースフォーラムみの」が結成され、翌年には薬草・香草を栽培する50アールのハーブ園が開園。その取り扱いと販売を行う「ハーブみの」という会社まで設立されました。
この取り組みが評価され、三野市は香川県としては初めての「健康文化とし宣言の町」になり、県が推奨する「食と農を考える」事業の一環として、食についての勉強会や講演会などを開いてきました。この流れで、もっと「食と薬草」について極めていこうということになり、自然と「薬膳」が大きなテーマになりました。
その翌年の平成9年、薬膳の講演会や講習会の講師としてお招きした富山大学の能宗久美子先生から、こんなお話を聞きました。
「本気で町民の健康づくりを考えるなら、発芽玄米というすごいお米がありますよ」
そしてこれが、安藤氏の発芽玄米との運命の出会いでした。
発芽玄米についての良さと能宗先生のご自身の体験を教えていただいた安藤氏と現場のスタッフの胸は高鳴りました。早速発芽玄米の栽培可能性調査や指定品種の申請を済ませ、一年ほどでいよいよ”発芽玄米作戦”はスタートしました。発芽玄米はものすごいスピードで口コミを中心に広まっていき、反響は非常に大きいものでした。
その後も「発芽玄米のペットフード」など、次々と発芽玄米をもとにした商品開発を始めました。事業が軌道に乗り始めると本格的な組織を作り、本書が出版される平成12年にはついに三野町産の独自の発芽玄米である「神農米」が誕生しました。
以上が三野町の発芽玄米で町おこしをした歴史です。この安藤氏の新しい町づくりや新しい自治体の変革を実行する姿勢こそ、私たちも学ぶべきものがあります。
(3)なぜ発芽玄米が広まったのか
では一体なぜ発芽玄米がここまですぐに広まり、町おこしの役に立ったのでしょうか。これには大きく二つの理由があります。
まず一つ目は栄養価が高いことです。発芽玄米はギャバと呼ばれる物質を多く含んでおり、この成分は血圧を下げる作用を持っています。それだけではなく、美容効果や血管の効果の防止、さらにガンの発生の防止の面でも発芽玄米は有効です。脳梗塞や心筋梗塞の予防にも有効で、本当に発芽玄米は普通の玄米以上の栄養価を誇ります。
二つ目は、「美味しい」ことです。玄米というと、硬くて美味しくないイメージを持つかもしれませんが、発芽玄米はそんなことありません。発芽玄米は白米のように非常に柔らかく、どんな人にも好まれやすいです。
以上二つが発芽玄米の特徴であり、瞬く間に三野町に広まった「秘密」です。
まとめ
今回は安藤氏の三野町町おこしの成功の軌跡、そして発芽玄米の素晴らしさについて解説しました。まだ発芽玄米を食べたことのない方は、これをきっかけに是非食べてみてください。それがあなたの健康生活の始まりになるかもしれません。
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