今回は「老化の危険因子 糖化」の要約です。
著者は医学博士の伊藤 喜一郎(いとう きいちろう)氏です。
「糖化」というのは、体内の糖分とタンパク質が結合することで、グリケーションやメイラード反応ともよばれ、細胞などを劣化させてしまう現象で人間の体内ではごく普通に行われています。
糖化が起きると生成される物質があり、このことをAGESといいます。
日本語に訳すと、糖化最終産物となります。
このAGESが、肌のくすみや弾力低下による、たるみ、しわをはじめとした老化現象を引き起こし、肌の老化の促進以外にも、動脈硬化、血管の老化促進、網膜症や腎症、肝硬変、糖尿病の合併症、アルツハイマー病などにもつながります。
本書では、その中でもとくに老化と糖化の関係について詳しく解説しています。
本要約の要点は3つです。
1,糖化は老化を促進する
2,糖化は免疫力を低下させる
3,糖化を防ぐには
糖化は老化を促進する
近年、糖化に起因する生体ストレスは酸化ストレス、生活習慣、免疫機能、心身ストレスに並ぶ老化危険因子のひとつだとして、アンチエイジングに焦点があてられました。
生体内の反応については、ヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)が血液中のグルコースと反応して糖化することが発見され、糖尿病になれば、ヘモグロビンA1cと呼ばれる数値が上昇します。さらに、恐ろしいことに、糖化と糖尿病の合併症で、腎症や白内障、神経症があり、この合併症が悪化すればするほど、老化が進むのです。
その老化は加齢による正常なものとはちがい、病的な老化であり、糖化というものは、極端に早く老化する人をつくってしまうのです。
また、糖尿病は、そこから引き起こされる合併症が非常に恐ろしい病気です。
老化は活性酸素が発生し、体が酸化することによってもすすみますが、近年では、酸化よりもむしろ糖化の方が健康と病の大敵だといわれています。
老化の中でも肌の老化をみてみると、コラーゲンやエラスチンといったタンパク質が糖化し、AGESが増加すると肌の弾力性が低下するほか、くすんでみえるようになります。
肌の弾力性が低下するのは、真皮層に蓄積されたAGESが繊維間架橋を形成する結果、繊維と繊維の間が固定され、しなやかさが失われることで起こります。
また、全体の約3割がコラーゲンで構成されている骨では、AGESの蓄積がすすむことで、骨質が老化します。
そして、骨が硬く、脆くなり、骨粗鬆症の原因になることが指摘されているのです。
一方、コラーゲンやエラスチンなどで、構成される血管では、糖化反応により、AGESが溜まることで、アテローム(血管内皮に付着した粥状構造物)が形成され、循環不良を起こし、動脈硬化につながる可能性があります。
そのほか、アルツハイマー病への関与があるなど、AGESは、糖尿病の合併症のみならず、老化現象や生活習慣病など多くの疾患に影響を及ぼすのです。
糖化は免疫力を低下させる
私たちの体は、約60兆個ともいわれる数の細胞から成り立っています。
人は50歳位になると、1日に約5000個ものガンの芽が出るといわれています。
しかし、このガンの芽は、免疫力によってつみとられ、ガンにかからないようになっています。しかし、人間の体が歳をとり、免疫力が低下していくことによって、ガンやさまざまな生活習慣病にかかってしまうのです。
糖化によるAGESの及ぼす害はすでにのべてきましたが、体のあらゆる細胞の機能低下と共に、全身の免疫力の低下をもたらします。
その結果、体のだるさや疲れ、内臓の働きの鈍さ、歯周病、水虫といった炎症も悪化したり、感染症にもかかりやすくなってくるのです。また、老化や発ガンも免疫力の低下によるのです。日頃からの抗糖化の対応が重要になってきます。
糖化を防ぐには
糖化を防ぐための基本としては、いつもの生活習慣や食生活から糖化ストレス対策を意識することが大切です。
生活リズムの中では適度な運動を、食のリズムの中では、ゆっくり噛んで、摂取食品には野菜、低GI食品(グリセリック・インデックス値)など食後血糖を急激に上昇させない食品を選び、ジュースやお菓子などの糖類の含有量の高いものを避けるなどといった食物のとり方が重要です。
低GI値の食品は、穀類では全粒物、麦、おかゆ(玄米)、野菜類ではサヤインゲン、玉ねぎ、豆類では小豆、大豆、魚介類ではカキ、シジミ、果物ではメロン、モモ他さまざまな食品があります。これらを上手に摂取することが重要です。
また、食べ方にもコツがあります。そのコツは5つです。
①野菜から食べ、順番に肉、魚、炭水化物の順で血糖値の上がりを緩やかにする
②緑の野菜をたくさん食べる
③加工食品や加熱しすぎた食品を摂りすぎない
④昼食を食生活の切り替えポイントにする
⑤食後1時間に体を動かすようにする
活性酸素が発生することで、老化が進みますが、大切なことは糖化をいかに防ぐかということです。これからは、「抗糖化運動」というのが、広まってくるでしょう。
まとめ
この本の要約では、糖化というものがどういう現象で、糖化がすすむと人体にどのように影響を及ぼしていくのか、糖化により老化を促進させ、様々な生活習慣病や、合併症にもつながることがわかりました。
そうならないためにも、適度に運動をし、低GI食品や野菜の摂取に気をつけ、食のリズムを見直すことにほかなりません。
今までは、平均寿命でいかに長く生きるかが大きな課題でしたが、近年は健康寿命をいかに延ばすかが大きな話題になってきています。
どんなに長生きをしても、健康的でなければ、幸せとはいえません。
抗糖化対策をしっかりとし、いつまでも若々しく健康で長生きをしたいものです。
気になる方は、ぜひ一度手にとって読んでください。
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