腸に関する本のブログ

腸内細菌の効用(河合康雄氏)要約

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今回は、「腸内細菌の効用」~成人病を防ぐ画期的な食品の発見~
の要約です。
著者は帝京大学医学部講師 農学博士/河合康雄(かわい やすお)氏です。

本書のタイトルの副題「成人病を防ぐ画期的な食品の発見」とは、腸内細菌の一種であるエンテロコッカス(ストレプトコッカス)・フェカリス・カワイ株という人間の腸から発見された乳酸菌が、動脈硬化の最大原因である血中のコレステロールと中性脂肪を低下させるのに絶大な効果があるという驚くべき世界で初めての発見のことです。

これは、昭和57年に行われた日本動脈硬化学会のシンポジウムで発表されました。
また、平成3年に帝京大学医学部の山口英世教授らの研究グループは、エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株に抗がん効果や真菌感染に対する予防効果、血圧降下作用があることを確認したと発表しています。
本要約では、この発見を中心にした腸内細菌について説明します。

本要約の要点は3つです。

  1. 腸内細菌とは
  2. 乳酸球菌 エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株の発見
  3. 乳酸球菌 エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株の効果

腸内細菌とは

私たちがいるこの地球上には、無数の細菌が存在しています。
人間が生まれてくるときには、無菌の状態ですが、すぐにいろいろな種類の細菌が腸内に住むようになります。
このように腸管内を住みかとして存在している細菌を腸内細菌と呼びます。
この腸内細菌は、腸内において叢(そう)を成して存在し住みついています。
これを腸内フローラと呼んでいます。
胃から大腸までの腸管全体では、300種類の腸内細菌が存在し、重さにして1kg、その数はなんと100兆個といわれています。

腸内細菌と老化は密接な関係があります。歳をとるとともに、私たちの身体の様々な機能は変化し、それに伴って腸内の細菌も変化し、私たちの体に対する影響の仕方も変わってきます。つまり腸内細菌は、歳をとるとともに低下していく様々な機能に対して働きかけ、その機能を維持または、低下の抑制をしています
 また、腸内細菌は免疫にも影響しています。
私たちの身体には病原菌、ウイルスやその他の異物が侵入した時、それらと闘って、私たちの身体を防御し、元の正常な身体に保とうとするしくみの一つに免疫機能があります。

乳酸球菌エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株の発見

乳酸球菌は、乳酸菌の1種なのですが、丸いので球菌と呼ばれ、普通のヨーグルトなどの乳酸菌飲料に入っている乳酸菌は、棒状で桿菌(かんきん)というのが大部分です。
乳酸球菌は、エンテロコッカスと英語ではいい、エンテローとは、”腸内“という意味です。コッカスとは”球菌“という意味です。
乳酸球菌エンテロコッカスは、一般には、食品に含まれる細菌としてよく知られておりバター、チーズ、ヨーグルト、飼料添加物などの酪農用、生菌剤、サラミソーセージ、醤油、発酵生産物、乳酸菌飲料等に、かなり古くから用いられてきています。
ところが、腸内(細菌)から取れた乳酸球菌の利用に関しての研究は、非常に少なく、当時は、乳酸球菌エンテロコッカスの人間における生理的な役割の研究が殆どなされていなかったのです。
そこで、著者は、人間にとって安全であろう、この乳酸球菌に注目し、血中のコレステロールを減らす乳酸球菌エンテロコッカスの研究をはじめたのです。その結果、血中のコレステロールだけでなく、中性脂肪も著しく、低下させる菌株を発見したのです。

乳酸球菌エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株の効果

動脈硬化とは、簡単にいえば読んで字のごとく動脈が硬くなることで、たとえば、野ざらしのゴムホースが、段々と弾力を失い、硬くなり、ひび割れて、最後には、ボロボロになってしまうようなことです。動脈硬化には、粥状(アテローム)硬化、細動脈硬化、中膜効果があり、中でも粥状効果と細動脈硬化が問題であるといわれています。
粥状効果は、大動脈や脳動脈あるいは心臓の栄養を司る冠状動脈など太い血管で発生し、血液中のコレステロールや、中性脂肪等が、血管の内膜に入り込み内膜に粥腫を起こします。この粥腫により、血管が細くなり、そこで血栓を起こすと、組織に血液が流れなくなり、脳で発生すれば、脳梗塞、心臓で発生すれば心筋梗塞となるのです。
一方,細動脈硬化は非常に細い血管で発生し、高血圧等の影響を受けやすく、とくに脳と腎臓に発生しやすいので、脳で発生すれば「ぼけ」が発症し、腎臓で発生すれば腎不全等が発生します。
この動脈硬化の最大の危険因子とされているのが、高脂血症といわれる病気です。
血清中のコレステロールや中性脂肪が高い値の状態を高脂血症と呼び、もっとも動脈硬化になりやすい状態のひとつです。
高脂血症といっても、コレステロールだけが高かったり、中性脂肪だけが高かったりする症状、あるいは、コレステロールも中性脂肪も両方高い等の約6種類の高脂血症が知られています。

高脂血症患者にカワイ株を投与してみたところ、血清コレステロール値が高い高脂血症患者に対してより一層のコレステロール作用があることがわかったのです。
また、血清コレステロールには、いわゆる善玉コレステロールと悪玉コレステロールがあります。悪玉コレステロールが増えると、大変危険で、動脈硬化の原因になるのです。
しかし、カワイ株は、善玉コレステロールのHDL-(高比重リポ蛋白)コレステロールを著しく上昇させ、悪玉コレステロールをLDL-コレステロールが著しく減少することもわかりました
その他、中性脂肪を低下させる著しい作用、肝機能の改善や血圧低下作用のあることもわかりました

まとめ

このように乳酸球菌 エンテロコッカス・フェカリス・カワイ株の発見は、世界各国から注目を浴びることになったのです。
病気の治療に用いる薬や食品には、副作用も同時にあることは、よくあることですが、カワイ株は、副作用もなく、人間の腸管から取れた乳酸球菌であるということからも、安全であると考えられています。

宿主である我々と腸内細菌の関係は、私たちが健康であれば腸内細菌も正常であり、環境が急変すると腸内細菌も異常をきたし、また悪い菌が腸内で増えれば病気になります。
健康であるために、腸内環境を整えることがいかに大切なものなのかということがこの発見からもわかります。

本書にはその他に、実験結果なども詳しく記載されていますので、興味があればぜひ一度手にとって読んでみてください。

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