今回は「DHA・EPA」の要約です。
著者は医学博士の星崎 東明(ほしざき はるあき)氏です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)と、EPA(エイコサペンタエン酸)というのは、サバやイワシ、サンマ、カツオなど、青背魚の脂肪(油)に多く含まれるオメガ-3系の多価不飽和脂肪酸で、α-リノレン酸等の総称のことです。
牛や豚など獣肉の脂は常温で固まりやすい飽和脂肪酸ですが、魚肉の油は常温では固まらない不飽和脂肪酸です。グリーンランド北西部のイヌイット(エスキモー)集落での疫学調査から魚肉の油の健康効果が脚光を浴びるようになりました。
牛や豚の肉、野菜を常食し、あまり魚を食べない欧米人の血液中には、アラキドン酸という脂肪酸が多いのに対して、魚、クジラ、アザラシなど海の動物を常食する、イヌイットの血液中には、アラキドン酸よりも、DHAやEPAが、多く含まれ、「魚の油に多く含まれるDHAや EPAが、血栓を出来にくくして、動脈硬化を、防ぐ」と報告されています。本書では、DHAやEPAの効能や機能について詳しく説明されています。
本要約の要点は、4つです。
- 脳機能維持に役立つDHAと血液をサラサラにするEPA
- DHA・EPAは、うつ病を予防
- 認知症患者は、オメガ-3系の脂肪酸不足
- アレルギーを改善する
脳機能維持に役立つDHA、血液をサラサラにするEPA
DHAは、特に眼の網膜や脳の灰白質に多く含まれ、青背魚では目玉の油に含まれています。血液をサラサラにする作用では、EPAと同様ですが、DHAには老人性認知症の予防、視力改善に効果があります。
動物実験においても、学習効果など、DHAが脳神経のシナプス部分で神経伝達に、重要なかかわりを持ち、脳機能維持や向上に役立つことが明らかになっています。
血栓をつくらせない(抗血栓)作用では、EPAが勝り、総コレステロール値や中性脂肪を下げる働きでは、DHAが勝るといわれますが、DHAと EPAを共に含む魚を摂る習慣が現代病を予防してくれると思います。
また、魚肉の油に含まれているEPAには、血栓をつくらせない成分が多く含まれていて、血液をサラサラにして血流をよくします。
不飽和脂肪酸の仲間には、植物性のリノール酸やオレイン酸がありますが、血栓を防ぐ効果はEPAの方がはるかに高いことがわかっています。
EPAには大きく分けて3つの効能があります。
① 血栓が固まるのを防ぐ作用があって、血栓が血管に詰まる脳梗塞、心筋梗塞を予防する働き。
② 悪玉コレステロール(LDL)値を下げて、善玉コレステロール(HDL)値を上げる作用があって、血管の動脈硬化を予防する働き。
③ 中性脂肪を下げる働きがあって、脂質異常症(高脂血症)、脂肪肝を予防する働き。
このように病気を予防し、治療をする上でも最も大切なことは、血液の循環をよくすることです。特に抹消に存在している毛細血管にまで血液がサラサラと流れなければ健康は維持できません。そのためには日頃から、血液をサラサラにする、DHA・EPAを摂ることは大切なことです。
DHA・EPAは、うつ病を予防
うつ病患者がこの10年間で約2.4倍に激増し、日本人の7人に1人、アメリカでは全成人の11.5%の人が苦しんでいるというデータがあります。
不況や人間関係などの影響もありますが、複雑な社会環境の中で今後ますます増加が予測されています。
魚を摂ると心が落ち着く、食物に含まれている脂肪の種類が精神面の健康、特にうつ病の改善に役立つという研究報告が国内外(アメリカ、イギリス、日本など)で積み重ねられてきました。
特に注目されているのは、サバやイワシなど青背魚に多い「オメガ-3系脂肪酸」の、DHAやEPAなどの、多価不飽和脂肪酸です。
なぜ、うつ病をはじめとする精神面に影響をするのでしょう。
それは、脂肪酸は細胞膜の材料になるからでオメガ-6系、オメガ-3系は体内で合成されないので、食べた脂肪によって細胞膜のオメガ-6系とオメガ-3系の比率が変わってしまうのです。脳は細胞膜が特に多く、セロトニンなど、神経伝達物質の出方に影響するからです。
認知症患者は、オメガ-3系の脂肪酸不足
今、「脳」ブームといわれています。
これからは、脳の老化による機能障害が、老年期認知症として始まり、増加することが確実です。老年期認知症といえば、血管性認知症とアルツハイマー型老年認知症です。この2つで80%以上を占めています。
東北大学の研究では、「認知症のお年寄りではオメガ-3系脂肪酸(DHA・EPA・α-リノレン酸)が健康なお年寄りに比べて不足している」と報告しています。
アメリカで認知症患者899人を9年間観察した結果、血液中のDHAが多い人の方が認知症を発症しにくいという報告があります。また、イタリアにおいても同様の結果報告がなされています。したがって、認知症の予防にDHAやEPA(オメガ-3系脂肪酸)を多く含む青背魚を日頃から積極的に摂取すべきです。
アレルギーを改善する
厚生労働省が1984年に発表した、アレルギーの患者、とりわけアトピー性皮膚炎の患者は約15万人余りでしたが、その後は恐るべき勢いで増加の一途をたどっています。
また、スギ花粉などが原因のアレルギー性鼻炎患者も全国で数千万人と驚くべき数字です。さらに学童においては、アレルギー性ゼンソクも増え続けています。
アレルギーを抑える薬としては、ステロイド(副腎皮質ホルモン)や抗アレルギー剤などがありますが、これらの薬は一時的には効果が出ますが、根本からの解決にはならず、副作用の点で問題になっています。
アトピー性皮膚炎や花粉症、鼻炎がいっこうに改善しない人や口内炎・吹き出物が出来やすい人は、体内でリノール酸が過剰になっており、慢性的な高炎症状態にあると考えられます。そこで、リノール酸の摂取量を極力抑えて、それと正反対の働きをするオメガ-3系の脂肪酸であるところの、DHAやEPAを摂取することです。
まとめ
この本の要約では、DHA(ドコサヘキサエン酸)と、EPA(エイコサペンタエン酸)の機能や効果などに、いろいろお伝えしてきました。脳機能にかかわり、認知症やうつにも予防効果があることがわかりました。その他、上手に摂ることによって、体内の硬い脂肪を溶かし、それを排出させるという溶解剤の役目を果たしてくれますので、ダイエットにもとっても役立つ脂肪酸なのです。本書には、オメガ-3系脂肪酸不足が原因となる病気やガンの臨床、DHAやEPAの効能が具体的に書かれています。
DHA・EPAを上手く摂取することで、健康的な生活を目指しましょう。興味があればぜひ一度手にとって読んでみてください。
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