かつては100歳まで生きるということは、多くの人にとって非常に価値あることだったと思いますが、今は少し違います。私たち日本人にとって、長生きはもはや前提となっています。今は医療技術の進歩や豊かな食生活によって100歳まで生きるのは当たり前の時代になりつつあります。現代では生きる長さだけでなく、100歳まで「健康で」生きることを重視する時代が到来しているのです。実際に世界でも心身ともに健康で現役の驚くべき100歳以上の高齢者が増えています。そしてこれは遺伝や家系などに関係なく、条件次第で誰でも健康長寿を実現できる可能性があることが、最新の科学で明らかになりつつあるのです。昨今では、人間の寿命を決めているのは、どうやら遺伝子だけではないということが明確になってきているのです。
本要約では、そんな100歳以上まで健康で生きている人たちから調査した習慣について、3つの要点に分けて解説しています。
本書の要点は以下の3点です。
1、健康長寿を手にするカギ
2、老化を防ぐ食事
3、老化を防ぐ運動
1、健康長寿を手にするカギ
なぜ百寿者は、長生きかつ健康でいられることができるのでしょうか。慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターで、ある101歳の被験者を対象に調査で取得した各種サンプルを調べ、分析をしました。その結果、一般の高齢者とは異なるある特徴が見つかりました。それは、体内で起きている「慢性炎症」のレベルです。一般の人の基準値は0.3以下ですが、被験者は0.03。極めて低い数値であることがわかりました。この慢性炎症が被験者に限らず、高齢者の健康長寿の達成において重要なカギを握っていることが明らかになりました。
一般的に炎症と言うと、体内に細菌やウイルスなどの異物が入ってきた際にその異物を取り除く、あるいはケガをした時にその傷を修復するといった炎症です。しかし、こういった炎症は急性炎症といいます。一方慢性炎症というのは、免疫機能が低下することで体の中のゴミを除去する能力が低下し、体内に蓄積されることで数ヶ月、数年単位で年齢とともに徐々に進んでいく炎症です。この慢性炎症は、動脈硬化や糖尿病、ガン、アルツハイマー病などの病気に関係していることがわかっています。慢性炎症に効果的に対処できるようになれば、あらゆる病気に対処できる。つまり、この慢性炎症をいかに抑えるかが健康長寿達成のカギを握っているのです。では慢性炎症を抑えるには何をすればいいのか。その具体的な習慣について次章で詳しく解説しています。
2、老化を防ぐ食事
実際にアメリカのカリフォルニア州、中米のコスタリカ、イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄など、百寿者が局地的に多い地域で、長寿の秘訣は何なのか研究をしました。すると、これらの地域に共通するライフスタイルがあることがわかったのです。多くの被験者を調べたら結果、魚、オリーブオイル、ナッツ類、緑黄色野菜などの「地中海食」が主に多く取られていることがわかりました。地中海食には、脂肪酸やポリフェノール、リコピンなどには抗炎症作用があり、それが影響を与えたとされています。さらに5カ国の高齢者を調査したところ、適切に地中海食を食べ続けた人ほど炎症の数値が低くなったのです。また、日本人の腸内細菌には生体に有益な機能が、諸外国の人よりも多く含まれており、それが日本人の平均寿命の高さや低い肥満率に関連している可能性があることが示唆されたのです。
食と健康長寿をテーマに研究している東北大学大学院の都築毅准教授は、日本人にとっては日本食がベストであり、慢性炎症を抑えるという観点から見ても充分効果が高いと指摘します。日本食によく使われる魚、大豆、海藻、野菜などには、地中海食と同様に抗炎症成分が含まれていると言います。また、日本食を取る傾向が高い人ほど認知症になるリスクが低かったというデータもあります。さらに、肉や魚が慢性炎症と心身の機能低下を抑えるということもわかっています。どの百寿者も魚、肉、卵などの動物性タンパク質をしっかり取っていたのです。よく食べることでよく動ける体を維持していく、これが健康長寿を達成する上で重要なことなのです。次章では、慢性炎症を抑えるもう1つのポイント、運動について解説しています。
3、老化を防ぐ運動
健康長寿の人がどんな生活を送っているのか、さらに調査するためにイタリアのサルデーニャ島を調査しました。そこは男性が元気であることが最大の特徴でした。また、この島は世界で最も男性の長寿率が高く、ギネス記録にも認定されたのです。サルデーニャ島では古くからヒツジやヤギの放牧が盛んで、1年の内半分近くを家族と離れて牧草地を転々とする男性もいると言います。そんな彼らの行動を調査すると、1日に歩く距離は平均8キロあまり。その多くが傾斜地で、1時間あたり約490キロカロリー消費することがわかりました。これは1時間サッカーやラグビーをするのと同程度で、平地で普通に歩く場合の3時間分に相当します。しかし、これほど満足な暮らしはない、体が動く限りいくつになっても続けたいと男性たちはみな口を揃えます。こういったことから、この島の男性が長生きである要因が、豊富な運動量を支える羊飼いのような仕事にあると言えます。運動によって、臓器や細胞で作られたゴミを回収するという効果があります。1章でも解説した体の中のゴミは慢性炎症を引き起こす原因となります。そのため、負荷の強い運動をすることによってゴミが体内に溜まることを防ぎ、慢性炎症を抑えることができるのです。しかし、都会に住んでいる我々ではこのような生活をすることは難しいでしょう。そのためできるだけ足腰が弱らないよう、筋力トレーニングをしたり、ストレッチをしたりといった運動習慣を心がけることが重要です。しかし、健康でいなくてはいけない、早く死にたくない、そんな強迫観念に駆られながら必死でランニングを続けるのはむしろ逆効果であると言われています。
ジム通いするのでも、そこで出会った友達との親睦を深めるなど、何かを生み出すための運動であれば楽しく、ストレスなく持続することができるでしょう。そのため専門家は、何をするかということ以上に、何のためにするかが大事だと指摘しています。
まとめ
本要約では、健康長寿の人にはどんな共通点があったのか、健康長寿の人はどんな食事を取っていたのか、またどんな生活を送っているのかを3つの章に分けて解説しました。魚、オリーブオイル、野菜などの地中海食や日本食が長寿に非常に関係していること、また日々の運動習慣が長寿にどう影響しているかがおわかり頂けたかと思います。加えて、本書では生きがいが死亡リスクを20%も下げるということも主張されています。運動習慣をつけることは大事ですが、それ以上に楽しんで、ストレスなく続けることが重要だということを教えてくれています。
本書では、要約で扱えなかった「老化を防ぐ心の持ちよう」や「慢性炎症をさらに抑える生きがいの見つけ方」なども詳しく解説されています。少しでも興味を持った人は、是非一度本書を手に取って読んでみてください。
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